子犬の歯を見たときに、「永久歯が生えてきたのに、乳歯がまだ残っている」「犬歯が2本並んで生えている」と気づいたことはありませんか?乳歯と永久歯が並んで生えることで歯並びや噛み合わせに悪影響を及ぼしたり、歯周病のリスクを高めたりします。
1.乳歯晩期残存(乳歯遺残)とは?
一般的に、犬の乳歯は生後3〜6週齢頃までに生えそろい、生後3〜7か月頃にかけて永久歯へと交換されます。永久歯は通常、生後6〜7か月頃までに生えそろいますが、個体差や歯の種類によって時期は異なります。
乳歯は、永久歯が成長する過程で自然に抜け落ちますが、乳歯が抜けずに残ってしまうことがあります。この状態を**乳歯晩期残存(にゅうしばんきざんそん)**と呼びます。
特に問題になりやすいのは、上顎や下顎の犬歯です。永久犬歯のすぐ隣に乳犬歯が残り、犬歯が2本並んでいるように見えます。
なお、乳歯が残っているように見えても、永久歯がまだ生えていない場合や、永久歯そのものが欠如している場合もあるので、正確な判断には、口腔内の診察や必要に応じた歯科レントゲン検査が必要となります。
2.乳歯晩期残存が起こりやすい犬
乳歯晩期残存は、特に小型犬で多いです。(中型・大型犬でも起こりえます。)
- トイ・プードル
- チワワ
- ポメラニアン
- ヨークシャー・テリア
- マルチーズ
これらの犬種では、顎の大きさや歯の生え替わり方などが関係し、乳歯が残りやすい傾向があります。
乳歯晩期残存は、単に乳歯が抜けるのを待てば良いとは限りません。永久歯の位置や噛み合わせへの影響を確認しながら、適切な時期に対応することが大切です。
3.乳歯晩期残存の原因
乳歯晩期残存には、複数の要因が関係していると考えられています。
① 永久歯の萌出位置や方向の異常
永久歯が本来の位置からずれて生えてくると、乳歯の歯根吸収や自然脱落が適切に進まず、乳歯が残ることがあります。
特に犬歯では、永久歯が本来の位置とは異なる方向に萌出することで、乳歯が残存しやすくなります。
② 顎の大きさと歯の大きさの不均衡
小型犬では、顎の大きさに対して歯が密集しやすく、乳歯と永久歯が適切に並ぶためのスペースが不足することがあります。
③ 歯根吸収や歯の交換過程の異常
通常、乳歯は永久歯の萌出に伴って歯根が吸収され、脱落します。この過程が十分に進まない場合、乳歯が残存することがあります。
4.乳歯晩期残存を放置するとどうなる?
乳歯が残っていても、すぐに明らかな症状が出るとは限りませんが、次のような問題につながる可能性があります。
① 歯並びや噛み合わせの異常(不正咬合)
乳歯が残ることで永久歯の萌出位置が制限され、不正咬合が起こり、歯肉や口蓋に接触し、傷つけてしまうことがあります。
② 歯垢の蓄積と歯周病のリスク
乳歯と永久歯が近接して並ぶと、歯の間に食べかすや歯垢がたまりやすくなります。その結果、歯肉炎や歯周病のリスクが高まります。
③ 口腔内の痛みや外傷
永久犬歯の位置が異常な場合、歯が歯肉や口蓋に接触して潰瘍や外傷を起こすことがあります。食べにくそうにする、口を気にするなどの症状がみられる場合もあります。
④ 将来的な歯科トラブル
歯並びの異常や歯周病が進行すると、歯肉の炎症や歯周組織の損傷につながることがあります。乳歯が残存していると必ず問題が起こるわけではありませんが、早めにすることが重要です。
5.乳歯晩期残存はいつ治療すべき?
次のような場合は早期の受診をおすすめします。
- 永久歯が生えているのに乳歯が残っている
- 犬歯が2本並んでいる
- 下顎の犬歯が内側に向かって生えている
- 歯が歯肉や口蓋に当たっている
- 歯肉の赤み、出血、口臭がある
永久歯が生えそろう生後6〜7か月頃まで待ってからではなく、乳歯と永久歯が同時に存在していることに気づいたら、かかりつけ医に相談しましょう。
ただし、乳歯残ってるのを見つけ次第、すべて抜歯するということではありません。永久歯の萌出状態、乳歯の動揺、歯根の状態、噛み合わせへの影響などを総合的に判断します。
6.乳歯晩期残存の診断方法
口腔内検査(視診)
乳歯と永久歯の位置関係、歯肉の炎症、歯の動揺、噛み合わせなどを確認します。
特に犬歯では、歯がどの方向に生えているか、口蓋や歯肉に接触していないかを確認します。
歯科レントゲン検査(麻酔下)
歯科レントゲン検査では、見た目では分からない歯根の状態や、永久歯の位置、乳歯の歯根吸収の程度などを評価できます。
乳歯の抜歯を行う際にも、歯根の形態や残存状態を把握することは重要です。特に犬の乳犬歯は細長い歯根を持つため、慎重な処置が必要になります。
7.乳歯晩期残存の治療方法
乳歯晩期残存の主な治療は、残存している乳歯の抜歯です。
① 乳歯の抜歯
永久歯が萌出しているのに乳歯が残っている場合、乳歯を抜歯することが一般的です。
乳歯を抜歯することで、歯が密集している状態を改善し、歯垢がたまりやすい環境を減らせる可能性があります。
② 永久歯の位置異常への対応(歯科矯正)
永久歯が異常な位置に萌出している場合、乳歯の抜歯だけで改善することもあれば、噛み合わせに対する追加の治療(矯正)が必要となることもあります。
8.乳歯晩期残存を予防するには?
乳歯晩期残存そのものを確実に予防する方法はありません。しかし、定期的に口の中を確認することで、早期発見につなげることができます。
子犬を迎えた時のワクチン接種や健康診断は、月齢的に乳歯から永久歯に生え替わる生後3~7か月齢に当たることが多く、当院では乳歯晩期残存を確認をする大切な時期として、飼い主様にお話しています。
ご家庭では、次の点を確認してみてください。
- 乳歯が抜けているか
- 永久歯と乳歯が同時に並んでいないか
- 犬歯が内側や外側に大きくずれていないか
- 歯肉に赤みや出血がないか
まとめ|乳歯が残っていたら早めに相談しましょう
犬の乳歯晩期残存は、特に小型犬でよくみられる歯科トラブルです。
乳歯と永久歯が並んでいる状態を放置すると、歯垢の蓄積や歯周病のリスクが高まるほか、永久歯の位置異常や噛み合わせの問題につながる場合があります。
大切なのは、永久歯が生えてきた段階で乳歯の残存に気づき、適切な時期に診察を受けることです。
「乳歯がまだ残っているけれど大丈夫かな?」「犬歯が2本並んでいるけれど、抜歯は必要?」など、気になることがあれば、早めに当院へご相談ください。
いなば動物病院では、歯の生え替わりや噛み合わせの状態を確認し、それぞれの犬に合った治療方針をご提案します。
