愛猫が何度もトイレに行ったり、血尿が出たり、苦しそうに鳴いたり。そのような普段と違う様子が見られる場合、猫の泌尿器の病気の一つとして多いのが「尿石症」です。
放置すると命に関わることもあるため、飼い主さんが正しい知識を持つことが非常に重要になります。
今回の猫の尿石症については以下のことを解説します。
- 尿石症の危険な症状
- 病気の根本的な原因
- 動物病院での診断や治療の流れ
- 治療後に再発させないための具体的なケア方法
大切な家族である愛猫の健康を一緒に守っていきましょう。

もしかして尿石症?愛猫が見せる危険なサイン(症状)
猫は不調を隠すのが上手な動物ですが、排尿に関するトラブルは行動に表れやすいです。
愛猫のSOSサインを見逃さないために、まずは具体的な症状を知ることが第一歩です。
尿石症のサインには、比較的わかりにくい初期症状から、一刻を争う緊急性の高い症状まで様々です。
早期発見が鍵!見逃したくない初期症状チェックリスト
以下の症状が当てはまる場合は、尿石症の可能性があります。
日頃から愛猫のトイレの様子を気にかけてあげることが、早期発見に繋がります。
| 症状 | 具体的な様子 | 考えられる理由 |
|---|---|---|
| 頻尿 | ・何度もトイレに行く ・1回の尿の量が少ない | 結石や炎症が膀胱を刺激し、常に尿意を感じているためです。 |
| 排尿困難・排尿痛 | ・トイレで長く力んでいる ・排尿中に苦しそうに鳴く | 結石が尿道を通り抜ける際の痛みや、炎症による不快感が原因です。 |
| 血尿 | ・おしっこがピンクや赤色、茶色っぽい ・キラキラした砂のようなものが混じる | 硬い結石が尿路の粘膜を傷つけて出血している可能性があります。 |
| 不適切排尿(粗相) | ・トイレ以外の場所でおしっこをしてしまう ・落ち着きがなくウロウロする | 排尿時の痛みを「トイレが原因」と誤って学習し、トイレを避けているのかもしれません。 |
| 陰部を舐める | ・おしりの周りをしきりに舐めている | 陰部の痛みや違和感を和らげようとして、過剰にグルーミングをします。 |
これらのサインは、猫が「不快感を持っている」と伝えている重要なメッセージです。
気づいた点があれば、早めにかかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。
命に関わる緊急事態!すぐに病院へ行くべき症状
初期症状に加えて、以下の症状が見られる場合は、尿道が結石で完全に詰まってしまう「尿道閉塞」を起こしている可能性が非常に高いです。
尿道閉塞は急性腎障害や尿毒症を引き起こし、24時間以上排尿がないと命を落とす危険がある緊急事態です。
- トイレで力んでいるのに、尿が一滴も出ない
- ぐったりして元気がない、隠れて出てこない
- 食欲が全くない、または嘔吐を繰り返す
- お腹を触ると嫌がる、またはパンパンに張っている
これらの症状が見られた場合は、様子を見ずに、すぐに動物病院へ連絡してください。
夜間や休日であっても、救急対応している病院を探して、一刻も早く診てもらう必要があります。
猫の尿石症とは?原因をわかりやすく解説
猫に辛い症状が出ている原因は一体何なのでしょうか。
尿石症の原因を知ることで、適切な治療と今後の再発予防に繋がります。
尿路に石ができる仕組みと2大結石の種類
猫の尿石症とは、腎臓から尿道までの尿の通り道(尿路)に、硬い「結石」ができてしまう病気です。
この結石は、尿に含まれる特定のミネラル成分が、尿の中で飽和状態になり結晶化し、それらが集まって大きくなることで形成されます。
猫の尿石症で特に多いのは、以下の2種類の結石です。
この2つで全体の90%以上を占めており、性質が異なるため、治療法も変わってきます。
| 項目 | ストルバイト結石 | シュウ酸カルシウム結石 |
|---|---|---|
| 主な成分 | リン酸アンモニウムマグネシウム | シュウ酸カルシウム |
| できやすい尿のpH | アルカリ性 (pH 7.0以上) | 酸性 (pH 6.5以下) |
| 好発年齢 | 若い成猫 (1〜6歳) | 中〜高齢の猫 (7歳以上) |
| 食事療法での溶解 | 可能 | 不可能 |
| 特徴 | 細菌感染が原因となることもある | 一度できると手術での摘出が必要 |
このように、結石の種類によって治療方針が大きく異なるため、動物病院で正確な診断を受けることが大切です。
なぜうちの子が?尿石症の主な原因
尿石症は、ひとつの原因だけでなく、様々な要因が複雑に絡み合って発症します。
主な原因として、以下の点が挙げられます。
飲水不足
猫の祖先は砂漠地帯で暮らしていたため、少ない水分で濃いおしっこを作る体の仕組みを持っています。
しかし、この体質が尿中のミネラル濃度を高め、結石ができやすい原因にもなっています。食事のミネラルバランス
フードに含まれるマグネシウム、カルシウム、リンなどのミネラルが多すぎると、尿中に排出される量も増え、結石の材料となってしまいます。体質や遺伝
特定の猫種(ペルシャ、ヒマラヤン、アメリカンショートヘアなど)は、遺伝的にシュウ酸カルシウム結石ができやすいと言われています。
また、一度尿石症になった猫は、再発しやすい体質であると考えられます。性別
特にオス猫は、尿道がメスに比べて細く長いため、小さな結石でも詰まりやすく「尿道閉塞」のリスクが非常に高いです。細菌感染
膀胱炎などの細菌感染が起こると、尿がアルカリ性に傾き、ストルバイト結石ができやすくなることがあります。ストレスやトイレ環境
トイレが汚れていたり、落ち着かない場所にあったりすると、猫は排尿を我慢してしまいます。
尿が膀胱に溜まる時間が長くなると、結石が形成されやすくなります。肥満や運動不足
肥満になると水を飲む量が減ったり、動かずに排尿回数が減ったりする傾向があり、尿石症のリスクを高めます。
動物病院での診断と治療の流れ
どんな検査をするの?(診断方法)
尿石症の診断と結石の種類を特定するために、いくつかの検査を組み合わせて行います。
飼い主さんは、愛猫の症状がいつから、どのような様子か、普段の食事内容などをメモしておくと、問診がスムーズに進みます。
| 検査の種類 | 目的と内容 |
|---|---|
| 問診 | 飼い主さんから症状の経過、食事内容、生活環境などを詳しく聞き取ります。 |
| 身体検査 | お腹を触診し、膀胱が張っていないか、痛みがないかなどを確認します。 |
| 尿検査 | 尿のpHや結晶の有無、細菌感染の有無などを顕微鏡で詳しく調べ、結石の種類を推測します。[10] |
| 画像検査 | X線(レントゲン)や超音波(エコー)で、結石の大きさ、数、位置を直接確認します。 |
これらの検査結果を総合的に判断し、最適な治療方針を決定します。
結石の種類で変わる治療法
検査によって結石の種類が特定されると、その種類や猫の状態に合わせた治療が始まります。
治療法は、大きく分けて「内科治療」と「外科治療」の2つがあります。
食事で溶かす内科治療(ストルバイト結石など)
ストルバイト結石のように、特定の条件下で溶ける性質を持つ結石の場合は、内科治療が中心となります。
食事療法
尿のpHを酸性に傾け、結石の材料となるミネラルを制限した特別な「療法食」に切り替えます。
この療法食を続けることで、数週間から数ヶ月かけて結石を溶かしていきます。
治療中は、獣医師の指示通りに療法食だけを与え、おやつなどを控えることが重要です。薬物療法
細菌感染がある場合は抗生物質を、痛みや炎症が強い場合は鎮痛剤や抗炎症剤を投与します。
手術が必要になる場合(シュウ酸カルシウム結石など)
以下のような場合には、外科的な処置が必要となります。
食事で溶かせない結石
シュウ酸カルシウム結石は食事では溶けないため、手術で直接取り除くことが基本的な治療法となります。尿道閉塞を起こしている場合
命に関わる緊急事態のため、まず麻酔をかけて尿道にカテーテルを挿入し、詰まっている結石を膀胱に押し戻して尿道を確保します。結石が大きい、または数が多い場合
内科治療での改善が見込めない場合、膀胱を切開して結石を摘出する手術(膀胱切開術)を行います。
再発を防ぐために飼い主ができること
尿石症は、一度治っても再発しやすい病気です。
そのため、治療が終わった後も、日々の生活の中で再発予防を続けていくことが何よりも大切になります。
ご家庭でできる具体的なケアの方法は以下の様なことがあります。
食事管理と水分補給の工夫
再発予防の柱は、「食事」と「水分」です。
おしっこを薄く、結石ができにくい状態に保つことが目標です。
食事管理
- 病院から処方・推奨された療法食を指示された期間は必ず続けましょう。
- 自己判断でフードを変えたり、おやつを与えすぎたりすると、再発のリスクが高まります。
- 体重管理も重要です。肥満を防ぎ、適切な食事量を守りましょう。
水分補給の工夫
- ウェットフードは食事と一緒に水分が摂れるのでおすすめです。
- 新鮮な水を常に飲めるように、家の複数箇所に水飲み場を設置しましょう。
- 水が流れる循環式の給水器や、陶器・ガラスなど様々な素材の器を試してみるのも良い方法です。
トイレ環境とストレスの軽減
猫が気持ちよく排尿できる環境を整えることも大切な予防策です。
排尿を我慢させないように、以下の点を見直してみましょう。
- トイレの数は「猫の数+1個」を目安に設置する。
- トイレは常に清潔に保ち、こまめに掃除する。
- 人通りの少ない、静かで落ち着ける場所にトイレを置く。
- 猫が好む素材や粒の大きさの猫砂を見つけてあげる。
また、過度なストレスは万病のもとです。
引っ越しや新しいペットを迎えるなどの環境の変化があった際は、特に注意深く様子を見てあげてください。
まとめ:愛猫のサインを見逃さず、落ち着いて正しい対応を
猫の尿石症は、飼い主さんの早期発見と適切な対応が、愛猫の健康と命を守る鍵となります。
- 日々の観察が大切:トイレの回数や尿の色、排尿時の様子など、普段からの小さな変化に気づくことが早期発見に繋がります。
- 尿が出ないのは緊急事態:トイレで力んでいるのに尿が出ない場合は、迷わずすぐに動物病院へ向かってください。
- 再発予防は飼い主さんのケアから:治療後も、食事管理や水分補給、ストレスのない環境作りを継続することが、愛猫の長期的な健康を守ります。
気になる症状があれば、まずはご相談ください。
いなば動物病院
