犬と猫の健康診断|血液検査・レントゲン等の費用・項目を解説

愛犬や愛猫の健康診断について、こんなお悩みはありませんか?

  • 「費用は一体いくらかかるんだろう?」
  • 「血液検査やレントゲンって、本当に必要なの?」
  • 「うちの子にとって大きなストレスにならないか心配…」

大切な家族だからこそ、健康で長生きしてほしいと願うのは当然です。
しかし、言葉を話せないペットの健康管理には不安や疑問がつきものですよね。

今回は、健康診断に関する飼い主様のあらゆる疑問にお答えします。
各検査項目の詳しい内容から費用目安、ペットへの負担を減らすコツまで、獣医師の視点から分かりやすく解説します。

なぜ元気でも健康診断は必要?犬と猫の「声なきサイン」を見つけるためには

「うちの子は毎日元気いっぱいに走り回っているから、健康診断はまだいいかな」
そう考える飼い主様も少なくないかもしれません。

しかし、犬や猫はもともと野生で生きていた動物です。
外敵に弱みを見せないよう、体の不調や痛みをギリギリまで隠す習性があります。
飼い主様が「何かおかしい」と気づいた時には、病気がかなり進行してしまっているケースも珍しくありません。

だからこそ、元気に見えるうちから定期的に健康診断を受け、「予防医療」を実践することが非常に重要なのです。

人間の4倍速い時間軸|年齢で変わる病気のリスク

犬や猫の時間は、人間の約 4倍の速さで進むといわれています。
つまり、年に 1回の健康診断は、私たち人間でいえば 4年に 1度しか受けていないのと同じ感覚です。

この時間の流れの違いを理解することが、ペットの健康管理の第一歩です。
ライフステージごとに病気のリスクも変化するため、定期的なチェックが欠かせません。

ペットの年齢人間の年齢(目安)ライフステージかかりやすい病気の
リスク例
〜1歳〜20歳若齢期先天性疾患、感染症、寄生虫
1歳〜6歳20歳〜40歳代成齢期歯周病、皮膚疾患、泌尿器系疾患
7歳〜10歳40歳代〜50歳代シニア期心臓病、腎臓病、関節炎、腫瘍
11歳以上60歳代以上高齢期慢性疾患の進行、認知機能の低下

「健康な時のデータ」が未来の愛犬・愛猫を救う

健康診断のもう一つの重要な目的は、「その子自身の健康な時のデータ」を記録しておくことです。
これを「ベースラインデータ」と呼びます。

血液検査などの結果は、一般的な基準値と比較するだけでなく、その子の過去のデータと比較することで、ごくわずかな変化にも気づけるようになります。
例えば、腎臓の機能を示す数値が基準値内でも、半年前の数値からじわじわと上昇していれば、腎臓病の超初期サインかもしれません。

このベースラインデータは、いわば「未来への保険」です。
万が一病気になった際、診断の精度を飛躍的に高め、最適な治療へと導くための、かけがえのない情報となります。

犬猫の健康診断、いつから?頻度は?年齢別おすすめプラン

では、具体的にいつから、どれくらいの頻度で健康診断を受ければよいのでしょうか。
ここでは、年齢に応じたおすすめのプランをご紹介します。

もちろん、犬種・猫種や個体差、持病の有無によって最適なプランは異なります。
最終的には、かかりつけの獣医師と相談して決めましょう。

ライフステージ推奨頻度おすすめの検査プラン目的
若齢期(〜1歳)年に 1回基本健診
– 身体検査
– 血液検査
– 便検査
先天的な病気の有無や、健康な状態のベースラインデータを確認します。
成齢期(1歳〜6歳)年に 1回基本健診+尿検査
– 身体検査
– 血液検査
– 便検査
– 尿検査
定期的な健康チェックで、病気の早期発見を目指します。泌尿器系の病気も増え始めるため、尿検査を追加します。
シニア期(7歳以上)年に 2回総合健診
– 身体検査
– 血液検査
– 便検査
– 尿検査
– レントゲン検査
– 超音波(エコー)検査
心臓病や腫瘍など、シニア期に多い病気を網羅的にチェックします。半年に一度の検査で、体調変化を見逃さないようにします。

【検査項目を徹底解説】何がわかる?うちの子に必要な検査は?

健康診断と一言でいっても、その内容は多岐にわたります。
ここでは、主要な検査項目について、それぞれ何がわかるのか、どんな時に必要なのかを詳しく見ていきましょう。
これらの知識があれば、獣医師からの説明も理解しやすくなり、納得して検査を受けさせることができます。

まずは基本の3つ!身体検査・尿検査・便検査

これらは、ペットへの負担が少なく、多くの情報を得られる基本的な検査です。
健康診断の入り口として、ほとんどの場合で実施されます。

身体検査
獣医師が五感を使って全身の状態をチェックします。

検査項目チェックする内容
問診飼い主様から食欲、元気、排泄の様子などを詳しく伺います。
視診歩き方、毛づや、皮膚の状態、目や耳の中などを観察します。
触診全身を触って、しこりの有無、関節の状態、リンパ節の腫れなどを確認します。
聴診聴診器を使い、心臓の音やリズム、肺の音に異常がないかを聴きます。
体重測定肥満や痩せすぎていないか、前回からの体重変化を確認します。

尿検査・便検査
自宅で採ったものを病院へ持参するのが一般的です。
採尿・採便の方法について、よくあるご質問をまとめました。

よくある質問回答
Q. いつ採ればいいの?A. できるだけ新鮮なものが望ましいです。特に尿は、採取してから時間が経つと成分が変化してしまうため、可能であれば 受診当日の朝 に採ったものを持参してください。
Q. どうやって採るの?A. 尿:ペットシーツを裏返して使ったり、トレーを使ったりして採取します。動物病院で専用の採尿キットをもらえることもあります。
便:ペットシーツの上にしたものを、ティッシュやビニール袋で直接触れないように採取します。
Q. どうやって保存するの?A. 密閉できる清潔な容器(醤油さしやラップで包んだタッパーなど)に入れ、冷蔵庫で保管してください。乾燥しないように注意しましょう。
Q. 持っていく量は?A. 尿:少量でも検査は可能ですが、できれば 1ml(小さじ 1/5)以上あると理想的です。
便:親指の頭くらいの量があれば十分です。

病気の兆候を見逃さない!血液検査でわかること

血液を採血し、血液中の細胞や成分を分析することで、体の内部で起きている様々な変化を知ることができます。
特に内臓の病気は、外見上の変化が現れにくいため、血液検査が早期発見の鍵となります。
シニア期のペットには特に重要な検査です。

なお、食事をすると血糖値や中性脂肪などの数値が変動するため、一般的には検査前の 8時間〜12時間の絶食 が必要です。
お水は飲んでも構いません。

検査の種類主な検査項目何がわかるか
血球計算(CBC)赤血球、白血球、血小板貧血や脱水、炎症、感染症の有無などがわかります。
生化学検査ALT, AST, BUN, CRE など肝臓、腎臓、膵臓などの内臓機能や、血糖値、コレステロール値などがわかり、様々な病気の指標となります。

体の中を可視化する画像検査|レントゲン・超音波(エコー)

血液検査が「体の機能」を調べるのに対し、画像検査は「体の形や構造」を調べます。
体の外からではわからない、骨や内臓の状態を直接見ることができます。

レントゲン検査と超音波(エコー)検査は、それぞれ得意なことが違うため、目的によって使い分けたり、両方を組み合わせて診断したりします。

検査方法レントゲン検査(X線検査)超音波検査(エコー検査)
原理X線を体に照射し、透過したX線の差を画像化します。超音波を体に当て、臓器から跳ね返ってくる反射波を画像化します。
得意なこと骨、肺、消化管内のガス、心臓の大きさや形全体を把握すること。肝臓や腎臓、心臓などの臓器の内部構造や、動きをリアルタイムで見ること。
発見できる病気例骨折、誤飲、肺炎、心肥大、一部の結石や腫瘍臓器の腫瘍、結石、心臓の弁の動き、妊娠の確認
ペットへの負担撮影は一瞬で終わります。じっとしていられない場合は鎮静が必要なこともあります。プローブを体に当てるだけで痛みはありません。毛を刈る必要があります。

【より詳しく調べるなら】CT検査など高度な検査

レントゲンやエコー検査で異常が見つかり、さらに詳しく調べる必要がある場合や、より早期の病変を発見したい場合には、CT検査という選択肢があります。
これは、X線を使って体を輪切りにしたような詳細な断層画像を撮影する検査です。

CT検査は全身麻酔が必要ですが、以下のような大きなメリットがあります。

  • レントゲンでは見つけにくい数ミリ単位の小さな腫瘍を発見できる
  • 臓器や骨の立体的な構造を把握できる
  • 手術を行う際に、病変の正確な位置や広がりがわかり、安全で的確な計画を立てられる

全ての動物病院に設置されているわけではありませんが、かかりつけ医と相談し、必要であれば専門の施設を紹介してもらうことも可能です。残念ながら、当院もCT検査装置を持っていないため、必要と判断した場合は、他院を紹介させて頂いてます。

気になる費用はいくら?検査項目別の料金目安と賢い受け方

当然ながら、健康診断にかかる費用は、飼い主様にとって大きな関心事の一つです。
費用は動物病院や検査内容によって異なりますが、目安としての当院での費用をお伝えしておきます。

プラン内容当院の場合(犬・猫)こんな子におすすめ
血液検査のみ
(血球+生化学)
8,500円まずは内臓の機能を手軽にチェックしたい若齢期のペット
基本健診
(身体検査+血液検査+尿検査)
10,000円年に 1回の定期健診を受けたい成齢期のペット
総合健診(ドック)
(基本健診+レントゲン+エコー)
25,000円様々な病気のリスクが高まるシニア期のペット
  • 上記の費用はあくまで目安です。初診料や再診料が別途掛かります。
  • ペット保険は、病気の治療が目的のため、予防にあたる健康診断は適用対象外となるのが一般的です。

費用を抑えたい場合は、動物病院が春や秋に行っている「健康診断キャンペーン」を利用するのも一つの方法です。
しかし最も大切なのは、費用だけで判断せず、年齢や犬種・猫種、気になる症状などを獣医師に伝え、その子にとって本当に必要な検査を相談して決めることです。

健康診断の準備と当日の流れ|ペットのストレスを減らすコツ

健康診断を受けることが決まったら、当日に向けて準備をしましょう。
しっかり準備することで、検査がスムーズに進み、ペットのストレスを最小限に抑えることができます。

STEP項目内容とストレスを減らすコツ
1. 予約事前確認(予約の必要性)– 検査内容と費用の確認
– 絶食・絶水の必要性の確認
– 採尿・採便の方法を確認
2. 前日〜当日朝絶食・採尿・採便– 指示された時間から絶食させます。盗み食いされないよう注意しましょう。
– 当日の朝、できるだけ新鮮な尿や便を採取します。
コツ:採れなくても無理強いはせず、病院で相談しましょう。
3. 当日の準備持ち物チェック– 診察券
– 採取した尿・便
– いつもと違う様子を記録したメモや動画
コツ:普段使っているタオルや好きなおやつ、おもちゃを持参すると、ペットが安心しやすくなります。
4. 来院移動– 必ずキャリーケースやケージに入れて、安全に連れて行きましょう。
コツ:普段からキャリーに慣れさせておくと、通院のストレスが大幅に減ります。
5. 検査お預かりまたは同席– 検査内容によりますが、1時間〜半日ほどかかることもあります。
– 飼い主様がいると興奮してしまう子は、お預かりして検査する方がスムーズな場合があります。
6. 結果説明獣医師からの説明– 検査結果について、獣医師から詳しい説明を受けます。
– 不明な点や不安なことは、遠慮なく質問しましょう。

失敗しない健康診断の進め方|高度な検査や心臓病が心配な方へ

健康診断は、かかりつけの動物病院で受けるのが基本です。
普段の様子をよく知ってくれているため、僅かな変化にも気づきやすいというメリットがあります。

しかし、ペットが高齢になったり、特定の病気が心配だったりする場合には、一歩進んだ視点で検査を進めて行くことも大切です。

CTや腹腔鏡など、高度な検査・治療設備があるか

より正確な診断や、ペットの身体に優しい検査・治療を望むなら、どのような設備があるかも重要な選択基準になります。

設備メリット
CTスキャナー– レントゲンでは見えない小さな病変を発見できる
– 3D画像でより正確な診断が可能になる
腹腔鏡・関節鏡– 小さな切開で手術ができるため、痛みや出血が少ない
– 術後の回復が早く、入院期間も短縮できる(低侵襲治療)
専門的な検査機器循環器科:心電図、心臓エコーなど心臓病の精密検査が可能
眼科:眼圧測定器、スリットランプなど目の専門的な検査が可能

全ての病院がこれらの設備を備えているわけではありません。
しかし、心臓病が心配な場合や、腫瘍の早期発見をしたい場合など、目的に応じて設備が整った病院を選ぶ、またはかかりつけの獣医師に紹介して貰うことで、より質の高い医療を受けることができます。

まとめ:定期的な健康診断で、愛犬・愛猫との幸せな毎日を

大切な愛犬・愛猫の健康診断について、様々な角度から解説してきました。

  • 犬猫の時間は人間の 4倍速く進むため、年に 1〜2回の定期健診が重要
  • 元気な時のデータを記録しておくことが、いざという時の診断に役立つ
  • 検査項目は、年齢や体調に合わせて獣医師と相談して決めるのが最適
  • 費用やペットへの負担など、不安な点は事前にしっかり確認・準備しておく

健康診断は、病気を早期に発見するためだけのものではありません。
「異常なし」という結果を得て、飼い主様が安心して毎日を過ごせることも、同じくらい大きなメリットです。

この記事が、飼い主様と愛犬・愛猫との幸せな毎日を一日でも長く続けるための一助となれば幸いです。
まずは、かかりつけの動物病院に、健康診断の相談をしてみてはいかがでしょうか。

いなば動物病院
電話番号 075-353-2700
住所 〒600-8415 京都府京都市下京区松原通烏丸東入上ル因幡堂町728-2
診療時間 午前9:00~12:00 午後17:00~20:00
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