犬猫のくしゃみ・鼻水、原因は?病院に行くべき?症状別の対処法と予防策

こんにちは。いなば動物病院です。今回はわんちゃん・猫ちゃんで良くある症状としての「くしゃみ・鼻水」についてのお話です。

愛犬や愛猫がくしゃみを繰り返したり、鼻水を垂らしたりしていると心配になりますよね。
「ただの風邪だろうか?」
「もしかしたら、何か重い病気のサインかもしれない…」
そんな不安を抱えている飼い主さんは少なくありません。

犬と猫のくしゃみや鼻水の原因から、動物病院へ行くべきかの判断基準、具体的な治療法、そしてご自宅でできるケアまでを詳しく解説します。

まずはチェック!動物病院へ行くべき危険なサインは?

くしゃみや鼻水が見られても、元気や食欲があれば少し様子を見ても良い場合があります。
しかし、中には緊急を要するケースも隠れています。
まずは、愛犬・愛猫の状態をよく観察し、以下の危険なサインがないか確認しましょう。

こんな症状はすぐ受診!緊急性の高いケース

一つでも当てはまる場合は、様子を見ずにすぐに動物病院を受診してください。
特に子犬・子猫や高齢、持病のある子の場合は、症状が急変しやすいため注意が必要です。

危険なサイン考えられる状態
呼吸が苦しそう・口を開けて呼吸している鼻づまりが重度、または肺炎など下部呼吸器の異常
鼻水に血が混じっている(鼻血)鼻の中の腫瘍や異物、重度の炎症、歯周病の可能性
元気や食欲がまったくない発熱や脱水など、全身状態が悪化しているサイン
顔が腫れている・目の下が腫れている歯の根元の感染(歯根膿瘍)や腫瘍の可能性
けいれんや意識の低下が見られる感染症が脳に影響を及ぼしているなど、極めて危険な状態
黄色や緑色のドロドロした鼻水が続く重度の細菌感染(副鼻腔炎など)を起こしている可能性

数日様子を見ても良い?比較的、緊急性が低いケース

以下の条件に当てはまる場合は、比較的緊急性は低いと考えられます。
ただし、症状が2〜3日以上続いたり、悪化したりするようであれば動物病院に相談しましょう。

  • 鼻水が透明でサラサラしている
  • くしゃみは出るが、回数はそれほど多くない
  • 元気も食欲も普段と変わりない
  • 呼吸は落ち着いている
  • その他の全身症状(嘔吐、下痢、発熱など)がない

うちの子はどれ?症状から考えられる原因を探る【鼻水の色・状態でチェック】

鼻水の色や状態は、原因を探るための大切な手がかりになります。
愛犬・愛猫の鼻水を観察し、どのタイプに近いかチェックしてみましょう。
ただし、これはあくまで目安であり、正確な診断は獣医師による診察が必要です。

鼻水の色・状態主な原因のヒント併発しやすい症状
透明・サラサラアレルギー、ウイルス感染の初期、異物による刺激目のかゆみ・充血、頻繁なくしゃみ
白っぽい・ネバネバ慢性的な鼻炎、感染症の進行鼻づまり、いびき、フガフガという呼吸音
黄色・緑色細菌の二次感染、副鼻腔炎(蓄膿症)発熱、元気消失、食欲不振
血が混じる・ピンク色鼻腔内腫瘍、異物、重度の歯周病、外傷片方の鼻からのみ、顔の変形、くしゃみの連発

【透明・サラサラな鼻水】アレルギーやウイルス感染の初期症状かも

人間と同じように、犬や猫もハウスダストや花粉などにアレルギー反応を示すことがあります。
アレルギーが原因の場合、透明で水のような鼻水が特徴です。
また、猫風邪などのウイルス感染の初期にも同様の鼻水が見られます。

【白・粘り気のある鼻水】炎症が長引いているサイン

透明だった鼻水が白っぽく濁り、粘り気が出てきたら注意が必要です。
これは鼻の粘膜の炎症が長引いているサインかもしれません。
放置すると慢性鼻炎に移行し、治療が難しくなることもあります。

【黄色・緑色の鼻水】細菌感染(蓄膿症)の可能性

黄色や緑色の鼻水は、細菌感染を起こしている可能性が高い状態です [1]。
ウイルス感染やアレルギーで弱った鼻の粘膜に細菌が繁殖し、膿が混じった鼻水になります。
この状態は副鼻腔炎(蓄膿症)とも呼ばれ、抗生物質による治療が必要になることがほとんどです。

【血が混じる・ピンク色の鼻水】腫瘍や異物、重度の炎症を疑う

鼻水に血が混じる場合は、特に注意が必要です。
高齢の動物では鼻の中の腫瘍(鼻腔内腫瘍)が原因であることも少なくありません [2]。
その他、散歩中に吸い込んだ植物の種などの異物や、重度の歯周病が原因で鼻血が出ることもあります。

犬と猫のくしゃみ・鼻水の主な原因7つ

鼻水の色だけでなく、考えられる原因を体系的に知ることも大切です。
主な原因は以下の通りです。

原因のカテゴリ具体的な病名・要因主な対象動物
感染症猫風邪(猫ヘルペスウイルス、カリシウイルス)、ケンネルコフ猫、犬
アレルギーハウスダスト、ダニ、カビ、花粉犬、猫
異物混入草の種、小さなゴミ、毛玉犬、猫
歯周病歯根膿瘍、口腔鼻腔瘻(こうくうびくうろう)[4]高齢の犬、猫
鼻腔内腫瘍ポリープ(良性)、腺癌、リンパ腫(悪性)高齢の犬、猫
鼻炎・副鼻腔炎慢性的な鼻の粘膜の炎症 [5]犬、猫
先天性疾患鼻腔狭窄、軟口蓋過長症短頭種(ペルシャ、ブルドッグなど)

原因1:感染症(猫風邪、ケンネルコフなど)

くしゃみや鼻水の最も一般的な原因は、ウイルスや細菌による感染症です。
猫では「猫風邪」、犬では「ケンネルコフ」と呼ばれる呼吸器感染症がよく見られます 。
これらはワクチンで予防できる場合が多いため、定期的な接種が非常に重要です。

原因2:アレルギー(ハウスダスト・花粉など)

アレルギー性鼻炎は、特定の物質(アレルゲン)に対する体の過剰な免疫反応です。
季節性のある花粉や、一年中存在するハウスダストなどが原因となります。
皮膚のかゆみや涙やけを伴うことも多いのが特徴です。

原因3:その他(異物・歯周病・腫瘍など)

上記の他に、様々な原因が考えられます。
突発的で激しいくしゃみは、鼻の中に何か異物が入ったサインかもしれません。
また、重度の歯周病により歯の根元から鼻に炎症が及ぶこともあります。
特に高齢で、片方の鼻からだけ血の混じった鼻水が続く場合は、鼻腔内腫瘍の可能性も視野に入れる必要があります。

動物病院での診断と治療の流れについて

実際に動物病院を受診した場合、どのようなことが行われるのでしょうか。
検査から治療まで、一連の流れを解説します。

どんな検査をするの?診断までのステップ

正確な原因を特定するために、いくつかの検査を段階的に行います。
症状や身体検査の結果から、獣医師が必要な検査を判断します 。

ステップ検査内容目的
1. 問診・身体検査症状の聞き取り、鼻や口の中の視診、聴診など全体的な健康状態と症状の基本情報を把握する
2. 血液検査全血球計算(CBC)、血清化学検査炎症反応の有無、感染症の兆候、内臓機能を確認する
3. 画像診断レントゲン検査、CT検査鼻の内部や歯の根元、肺の状態を詳細に確認する
4. 詳細検査内視鏡検査、細胞診・組織検査鼻の内部を直接観察し、組織を採取して病変を確定診断する

主な治療法の選択肢|薬からネブライザー療法まで

治療は、診断された原因に基づいて行われます。
一つの治療法だけでなく、複数を組み合わせて行うこともあります。

治療法対象となる原因・症状内容
薬物療法感染症、アレルギー、炎症抗生物質、抗ウイルス薬、抗ヒスタミン薬、消炎剤などを投与する
ネブライザー療法鼻づまり、慢性鼻炎薬剤を霧状にして吸入させ、鼻や気管の粘膜に直接作用させる
外科的介入異物、重度の歯周病、腫瘍内視鏡や手術で異物・腫瘍の除去、原因となる歯の抜歯などを行う
アレルギー管理アレルギー性鼻炎アレルゲンの除去、免疫療法(減感作療法)などを行う
支持療法脱水、食欲不振点滴による水分補給、栄養価の高い食事による栄養サポートを行う

お家でできる!症状を和らげるケアと予防法

動物病院での治療と並行して、ご自宅でのケアも症状の緩和に役立ちます。
ペットが少しでも快適に過ごせるよう、環境を整えてあげましょう。

つらい鼻づまりを楽にする3つのホームケア

  1. 湿度を保つ
    加湿器を使用したり、濡れタオルを干したりして、部屋の湿度を50〜60%に保ちましょう。
    鼻の粘膜の乾燥を防ぎ、鼻水の排出を助けます。
  2. 鼻の周りを清潔に保つ
    鼻水で汚れた部分は、濡らしたコットンなどで優しく拭き取ってあげましょう。
    固まってしまった鼻くそは、無理に取らずにふやかしてから拭うのがポイントです。
  3. 刺激物を避ける
    タバコの煙や芳香剤、スプレー類は鼻の粘膜を刺激し、症状を悪化させることがあります。
    ペットのいる空間では、これらの使用を控えましょう。

再発させないために。日頃からできる予防策

症状を繰り返さないためには、日頃からの予防が大切です。
以下の点を心がけ、愛犬・愛猫の健康を守りましょう。

  • 定期的なワクチン接種
    猫風邪やケンネルコフなど、感染症の多くはワクチンで予防または重症化を防ぐことができます。
  • 清潔な生活環境の維持
    こまめな掃除でハウスダストを除去し、アレルギーの原因を減らしましょう。
  • 口腔ケア
    毎日の歯磨きを習慣づけ、歯周病を予防することが鼻のトラブルを防ぐことにも繋がります。
  • ストレスの少ない環境づくり
    ストレスは免疫力を低下させる原因になります。
    安心して過ごせる場所を用意し、過度な環境の変化は避けましょう。

まとめ:気になる症状は早めに獣医師へ相談を

犬や猫のくしゃみ・鼻水は、よくある症状だからこそ、その裏に隠れた病気のサインを見逃さないことが重要です。
「いつもと違うな」と感じたら、それはペットからの大事なメッセージかもしれません。
自己判断で様子を見過ぎず、この記事で紹介した「危険なサイン」に当てはまる場合はもちろん、少しでも不安なことがあれば、かかりつけの動物病院に相談してください。
早期発見・早期治療が、あなたの大切な家族の健康を守るための最も確実な方法です。


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